2026/02/27 19:42

「母の服かぁ・・・僕には苦い思い出があるんだよね」
私が高齢女性のアパレルを販売していると知った
古くからの友人(男性・元同僚)がこんな話をしてくれました―
事業を営む父と教師の母のもと、ひとり息子として何不自由なく大切に育てられました。
ところが、彼が中学生の頃に父が事業に失敗。
家庭内の空気は一変し、
父自身も人が変わってしまい
些細なことで母に手をあげるようになったといいます。
TVドラマのような家庭崩壊が
まさか自分の身に起こるなど想像したこともなく
ただ、ただ、うろたえ、
母を必死にかばいました。
救いだったのは
息子の彼には父は一切手を出さなかったことでした。
とはいえ
父の暴力の犠牲になる母を見るのは耐え難く
大学進学を機に彼は東京へ。
母も追うように上京し、
父から身を隠すために
新聞広告で見つけた住み込み家政婦の職を得て
ひっそり暮らし始めました。
彼は彼でアルバイトのかけ持ちで学費と生活費を稼ぎ、
一流大学を卒業しました。
息子の彼が就職し
父が病死すると
暮らしは落ち着きを取り戻し、
母は家政婦を辞め産休代替教員として
再び教師を始めたのでした。
経済的に余裕が生まれた母は
ある時、新宿の伊勢丹へ。
少し贅沢をして買ったのは
小花柄のブラウスだったそうです。

その後
70歳半ばを過ぎた母は
息子の自宅からほど近い高齢者施設で暮らし始めました。
彼は週1で母の元へ通いました。
そしてある時
母が聞いたのです。
「ねぇ、あの伊勢丹で買ったブラウスだけど…」
「母さんの家に残っていた服はみんな処分したよ」
「えっ!」
その時の母の何とも言い難い哀しげな顔を
彼は今も忘れることができないと言います。
様々なことに耐え、我慢し、
ようやく取り戻した
明日を考えられる平穏な暮らし。
伊勢丹で思い切って買った花柄ブラウスは
頑張ってきた自分へのご褒美だったのでしょう。
着る、着ないに関係なく
ずっと手元に置いておきたい大切な1着があります。
見るだけで幸せ、持っているだけで安心という1着が。
「男の僕には、わからなかったんだよね」
おふくろは
あれ、どこにあるって、ずっと言っていたんだ―
男性であるがゆえに理解できなかった「女ごころ」
女性は年を重ねても
装いに対する意欲は衰えないもの。
大切にしていきたいし、大切にされたい―
母の大事な大事な「伊勢丹の服」まで
終活してしまった息子の
未だ癒えない後悔を聞いて
しみじみとそう思ったのでした。
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